2026年1月施行】改正行政書士法で変わるドローン申請代行の「境界線」と事業者が守るべき注意点

1. 導入:ドローン業界に激震。令和8年1月施行の法改正は「他人事」ではない

令和8年(2026年)1月1日、改正行政書士法が施行されました。昭和26年の制定から75年、今回の改正は「制定以来、最大規模の改正」と呼ばれています。ドローンに関わる全ての事業者にとって、これは単なる士業法の変更ではなく、これまでのビジネスモデルを根底から揺るがす「死活問題」であることを、まずは強く自覚してください。

本改正では、行政書士の「使命(第1条)」および「職責(第1条の2)」が新設・明確化され、行政手続きの適正化を担う国家資格者としての役割がより厳格に定義されました。これに伴い、無資格者による申請代行の取り締まりは劇的に強化されています。

本記事では、ドローン法務を専門とする特定行政書士の立場から、無資格代行の厳罰化の実態と、事業者が陥りやすい「法務リスク」の回避策を徹底解説します。

2. 改正の核心:第19条に追加された「いかなる名目によるかを問わず」の重み

今回の法改正における最大の焦点は、第19条(業務の制限)に「いかなる名目によるかを問わず」という文言が追加された点にあります。これは、これまで一部の業界で見られた「法の網をかいくぐるための言い逃れ」を完全に封じ込める、いわば「脱法行為の終焉」を意味します。

総務省は令和7年(2025年)6月7日付の通知(改正法公布通知)において、各府省庁に対し、行政書士でない者による関与を防止するための厳格な取り組みを依頼しています。これまでは「コンサルティング料」「機体販売の事務手数料」「コミュニティ会費」「スクール受講の無料特典」といった名目であればグレーゾーンとされてきた側面もありましたが、今後は実態として報酬(対価)を得て申請代行を行っていれば、即座に刑事罰の対象となります。

「うちは代行費用を別途取っていないから大丈夫だ」という認識は、もはや通用しません。機体販売価格や受講料の中に、実質的な申請代行のコストが含まれているとみなされれば、それは立派な行政書士法違反です。

3. 行政書士の独占業務に該当する「ドローン関連手続き」の総ざらい

ドローン運用における「官公署に提出する書類の作成」は、電磁的記録(デジタルデータ)も含め、行政書士の独占業務です。以下の業務を、行政書士資格のない者が報酬を得て代行することは法律で禁止されています。

  • DIPS2.0による各種オンライン申請・届出
    • 無人航空機の登録・機体認証の申請
    • 操縦者技能証明(操縦ライセンス)の取得申請
    • 飛行許可・承認申請(カテゴリーII・III飛行等)
  • 運用上の義務化されている通報・報告
    • 飛行計画の通報
    • 事故報告および重大インシデントの報告
  • 申請に付帯する専門書類の作成
    • 飛行マニュアル、飛行経路図の作成
    • 安全確保措置・リスク評価書類の作成

「DIPSに顧客のアカウントでログインし、入力を代行するだけ」という行為も、法律上は「電磁的記録の作成」に該当し、独占業務の侵害となります。

4. 【実務判断】申請サポートの「OK例」と「NG例」の徹底比較

ドローン事業者が「教育」と「代行」の境界線を踏み外さないための判断基準を示します。ポイントは、「実務を肩代わりしているか(Agency)」、それとも「やり方を教えているか(Education)」の違いです。

ケース適法性の判断専門家の視点
スクール受講特典として申請を無償代行するNG(違法)受講料という対価を得ている以上、名目が無料でも実態は有償代行です。
機体販売価格に申請費用を上乗せして販売するNG(違法)明確な対価性が認められ、最も摘発されやすい典型的な違反例です。
コンサル契約の中に申請代行を実質的に含めるNG(違法)「いかなる名目」にも該当。契約全体が脱法スキームとみなされます。
申請の「操作手順」や「入力方法」を講義するOK最終的な申請ボタンを本人が押す「教育」であれば適法です。
行政書士へ正式に取り次ぎ、紹介するOK行政書士が実務を行い、責任の所在を明確にする形であれば問題ありません。
飛行事業者が自社の機体を「本人申請」するOK自己の業務としての申請は行政書士法の制限を受けません。

5. 会社も処罰の対象に!「両罰規定」の新設と罰則の強化

今回の改正で、経営者が最も震撼すべきは、第23条の3として新設された「両罰規定」です。

  • 違反者個人への罰則:1年以下の拘禁刑(※懲役を統合した新刑罰)または100万円以下の罰金
  • 法人(会社)への罰則:100万円以下の罰金

「現場の従業員が良かれと思ってやった」という釈明は一切通用しません。法人が罰金刑を受けた場合、その社会的信用の失墜は計り知れず、とりわけ公共工事や自治体案件に関わる事業者にとって致命傷となる「入札参加資格の喪失」を招くリスクが極めて高いことを強調しておきます。国土交通省はすでに自動車関連業務で違反事例を公開しており、ドローン業界においても同様の厳格な取り締まり(執行)が開始されています。

6. ドローン事業者が今すぐ実施すべき「3つの実務対応」

「知らなかった」では済まされない時代。事業を継続するために、「コンプライアンス・バイ・デザイン(法令遵守を設計段階から組み込む)」の考え方に基づいた再設計が必要です。

  1. 業務の棚卸しとリスク点検 自社のサービス内容、契約書、ウェブサイトの記載を確認してください。「代行」「サポート」という表現が含まれていないか、実態として無資格者がDIPS入力を行っていないかを総点検します。
  2. 業務フローの再設計(切り離し) 申請実務を現在のパッケージから完全に切り離します。顧客自身による「本人申請」を促す教育指導に徹するか、信頼できる行政書士と提携し、透明性のある取次フロー(行政書士が直接受任し、責任を負う形)へ移行してください。
  3. 内部教育とコンプライアンス管理 現場スタッフや営業担当者に対し、法改正の重大性を周知徹底してください。従業員による「安易なサービス」が会社を倒産に追い込む可能性があることを共有し、社内のコンプライアンス体制を再構築します。

7. 結論:法令遵守(コンプライアンス)が事業の競争力を高める

今回の改正行政書士法は、不透明なグレーゾーンを排除し、ドローン業界の健全化を加速させるためのものです。コンプライアンスを軽視する事業者が市場から淘汰される一方、正しく法を守る事業者が顧客や取引先から選ばれる、健全な競争環境が整いつつあります。

ドローンに関連する法制度は日々複雑化しており、独力で全てをカバーすることは困難です。専門家である行政書士と戦略的なパートナーシップを構築することは、単なるリスク回避ではありません。それは、顧客に対する「安全・安心」の証明であり、結果として事業の継続性と信頼性を強固なものにする最良の投資なのです。