包括申請の完全ガイド

ドローンをビジネスに活用する際、避けて通れないのが「飛行許可・承認申請」です。現場のスピード感を削がず、事務負担を最小限に抑えるための「業務効率化の鍵」となるのが包括申請です。

本記事では、包括申請の定義やメリット、2025年3月の最新アップデートを反映したDIPS2.0での具体的な手続き、そして許可取得後の法的な義務について徹底解説します。


1. ドローン包括申請の概要と重要性

ドローンの包括申請とは、同一の申請者が一定期間内に反復して飛行する場合や、異なる場所で継続的に飛行する場合に、「期間」「日本全国」「日時・場所を特定しない」という条件で一括して許可・承認を受ける制度です。

「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」では、許可期間は原則3ヶ月とされていますが、実務上は最長1年間まで延長して申請することが一般的です。業務でドローンを頻繁に使用する事業者にとって、天候によるリスケジュール等に即座に対応し、コストを最小化するために不可欠な仕組みと言えます。


【最重要:包括申請の対象外について】 個人的な「趣味目的」の飛行は包括申請の対象外です。 趣味で飛ばす場合は、飛行の都度、場所を特定した「個別申請」を行う必要があります。この点は非常に間違いやすいため、十分注意してください。


3. 包括申請の3大メリット:運用の柔軟性とコスト削減

包括申請を活用することで、以下の3つの大きなメリットを得られます。

  • 申請手続きの負担軽減:飛行ごとに書類を作成し、審査を待つ必要がなくなります。特に「いつ、どこで」が流動的な点検業務や空撮案件を抱える事業者にとって、管理業務が劇的に簡略化されます。
  • コストの削減:申請回数が減ることで、社内スタッフの人件費や、行政書士への代行依頼費用を節約できます。行政書士への依頼費用は1回あたり約33,000円(税込)からが相場ですが、包括申請なら年間のコストを最小限に抑えられます。
  • 柔軟なスケジュール対応:ドローン飛行は天候に大きく左右されます。包括申請なら許可期間内であれば、突発的な天候不良によるリスケジュールにも、再申請なしで対応可能です。

4. 包括申請で「できる飛行」と「できない飛行」の境界線

包括申請は万能ではありません。カバーできる範囲と、個別の調整が必要なケースを切り分ける必要があります。

包括申請でカバーできる特定飛行

航空法で定められた「特定飛行」のうち、以下の6種類は包括申請が可能です。

  • 人口集中地区(DID)の上空
  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 人または物件から30m未満の距離での飛行
  • 危険物輸送
  • 物件投下

これらの多くは、航空局が用意した「航空局標準マニュアル02(場所を特定しない申請用)」を使用することで、標準的な安全対策を講じる前提で許可されます。

個別申請が必要なケース

以下のケースは安全リスクが高いため、包括申請の対象外となり、場所や日時を特定した個別申請が必要です。

  • 高度150m以上の飛行:空域管理者や空港事務所等との個別調整が必要なため。
  • 空港等周辺の飛行:航空管制への影響が大きく、関係機関との個別調整が必要なため。
  • イベント(催し場所)上空:第三者の上空を飛行するリスクから、飛行経路や日時、主催者との調整を特定する必要があるため。
  • 補助者なし目視外飛行(レベル3/3.5など):経路の安全性や立入管理措置を厳密に個別に審査する必要があるため。

航空法以外の規制

包括申請を取得しても、すべての場所で自由に飛ばせるわけではありません。「小型無人機等飛行禁止法」による重要施設周辺の規制、自治体条例(公園等)、土地所有者の承諾など、航空法以外のルールは別途確認が必須です。


5. DIPS2.0を活用した包括申請のステップバイステップ手順

申請は、国土交通省のオンラインシステム「DIPS2.0」で行います。2025年3月のアップデートにより、フローと責任の所在が大きく変わりました。

申請の正しいフロー

  1. アカウント開設:個人か企業・団体(法人)かを正しく選択してください。
  2. 機体登録(必須)申請前に機体登録が完了している必要があります。 登録記号(JUから始まる番号)がない機体では許可申請が進められません。
  3. 操縦者情報の登録:飛行経験、技能証明の有無、講習受講歴を登録します。
  4. 申請書の作成・提出:飛行範囲を「日本全国」に設定し、カテゴリーII飛行として作成します。

【重要】2025年3月アップデートの「具備義務」について

2025年3月より、航空局標準マニュアルを使用する場合、資料提出が簡略化され審査期間が最短1日まで短縮されました。しかし、これは「資料が不要になった」わけではありません。

【警告】 これまで提出していた「プロペラガード等の安全装備を装着した機体の写真」や「操縦者の飛行記録」などは、「申請者自身が適切に作成・具備し、保管する義務(具備義務)」に変わりました。 万が一、立入検査等でこれらの資料を備えていないことが発覚した場合、許可の取り消しや罰則の対象となります。スピード審査の代償として、自己責任による厳格な管理が求められるようになったことを忘れないでください。


6. 許可取得後の義務:法令遵守を続けるための実務

許可書を受け取ってからが、本当の安全運用のスタートです。

  • 飛行計画の通報:飛行前にDIPS2.0で日時・場所・高度を通報してください。他の機体との衝突回避のために不可欠な法的義務です。
  • 飛行日誌の作成・携行・保管:「飛行記録」「日常点検記録」「点検整備記録」の3種類を作成してください。これらは飛行時に携行(紙または電子データ)し、ドローン登録期間中は継続して保管することが義務付けられています。
  • 更新手続き:許可期間終了後も飛行を続ける場合、期間終了の40開庁日前から10開庁日前までに再申請を行う必要があります。

7. 飛行許可申請が不要になる特定の条件

一定の条件を満たす場合、申請の手間を省くことができます。

  1. 特定飛行に該当しない方法での飛行:日中・目視内・DID外・30m距離確保などをすべて満たす場合。
  2. 屋内飛行・100g未満の機体・係留飛行:四方を囲まれた屋内、100g未満の模型航空機、または30m以内の紐等で係留し第三者の立入管理を行う場合。
  3. 「カテゴリーIIB」飛行の免除国家資格(技能証明)を持つ操縦者が、機体認証(二種以上)を受けたドローンを操縦し、DID上空・夜間・目視外・30m未満を飛行させる場合、許可申請は不要となります。

8. まとめ:安全で効率的なドローン運用のために

包括申請は、単なる許可取得の手続きではなく、「継続的に安全な運用を維持するための仕組み作り」です。

2025年3月の制度改正により、審査は迅速化されましたが、一方で具備資料の自己管理責任は非常に重くなりました。「何となく」で申請を行い、資料の備え付けを怠ると、最悪の場合、許可取り消しという事業上の大きなリスクを招きかねません。

確実な法令遵守とスムーズな業務遂行を両立させたい場合は、ぜひ行政書士への代行依頼もご検討ください。専門家による適切なサポートが、貴社の安全なドローン活用の土台となります。