ドローンを飛行させる際、操縦者が最も頭を悩ませる問題の一つが「道路上空を通過させる場合、道路使用許可が必要なのか?」という点です。国土交通省への飛行許可(航空法)は取得していても、道路交通法に基づく「道路使用許可」の判断を誤ると、思わぬ法令違反に問われるリスクがあります。
本記事では、ドローン関連法規に精通した専門行政書士の視点から、どのようなケースで許可が必要になるのか、実務上の注意点を含めて詳しく解説します。
道路使用許可の基本概念
道路使用許可とは、道路交通法に基づき、道路の安全と円滑な交通を確保するために設けられた制度です。
道路は本来、人や車両が通行するために提供されている場所であり、これを「道路本来の使用方法」と呼びます。この本来の目的以外で道路を使用し、交通に影響を及ぼす可能性がある場合には、管轄する警察署長の許可を得ることが法律で義務付けられています。
道路交通法では、許可が必要な行為を以下の4つに分類しています。
- 1号許可:道路において行う工事や作業
- ドローン関連の例:道路上での操縦・補助作業、橋梁や架空線の点検作業など。
- 2号許可:道路に工作物を設置する行為
- ドローン関連の例:注意喚起の看板設置、撮影用機材の設置など。
- 【専門家のアドバイス】:看板等の設置が一時的ではなく「継続的」な場合は、道路使用許可に加えて「道路占用許可」という別の手続きが必要になる可能性があるため注意が必要です。
- 3号許可:道路に露店や屋台などを出す行為
- 4号許可:一般交通に著しい影響を及ぼす行為、または人が集まり交通を妨げる行為
- ドローン関連の例:ドローン撮影により見物人が集まり人だかりができる、ロケーション撮影を行うなど。
- 【専門家の知見】:4号許可はドローン自体の動きだけでなく、その飛行が引き起こす「二次的な影響(野次馬による交通阻害など)」を考慮して判断される点に注意してください。
【原則】道路上空の飛行に許可は不要
ドローンで道路の上空を単に通過させるだけであれば、原則として道路使用許可は不要です。
これは警察庁が出した通達「無人航空機に係る道路使用許可の取扱いについて」に基づいています。この通達では、以下の通り基本的な考え方が示されています。
「道路の上空において無人航空機を単に飛行させるという行為については、当該行為のみをもって、道路における危険を生じさせ、又は交通の妨害となるとはいえないことから、原則として、道路使用許可を要しない」
つまり、一定の高度を保ち、単に上空を通過するだけであれば、直ちに交通の妨げとはみなされません。
【例外】道路使用許可が必要となる6つのケース
原則不要であっても、実務上は「道路の本来の通行」を阻害する要素が加わることが多いため、以下のケースでは許可取得がリスク管理の上で不可欠となります。
- 道路上(車道・歩道)でのドローンの離発着
- 操縦者や補助者が道路上に立ち止まって操縦・監視を行う場合(1号許可に該当)
- 道路上に立看板を設置したり、補助者を配置して第三者の通行を制限したりする場合
- ドローン飛行を見ようとする見物人が集まり、交通の妨げになる恐れがある場合(4号許可に該当)
- 低空飛行(高度による)により、走行中の車両や歩行者に著しい影響を与える場合
- その他、道路を本来の通行目的以外で使用し、交通の妨げになる場合
※最重要注意点:歩道も「道路」です
初心者が最も陥りやすいミスが、「車道ではないから大丈夫」という思い込みです。「歩道」も立派な道路であり、道路使用許可の対象となります。歩道上で操縦者が立ち止まって操作したり、補助者を配置したりする場合も許可が必要であることを忘れないでください。
航空法(国土交通省への申請)との関係と注意点
道路使用許可(道路交通法)とは別に、航空法上のルール遵守も同時に求められます。特に以下の3点は実務上極めて重要です。
- 飛行計画の通報(必須) 多くの違反事例で見受けられるのが、許可を得ていても「飛行計画の通報」を怠っているケースです。特定飛行を行う際は、事前にDIPS(ドローン情報基盤システム)を通じて飛行計画を通報しなければなりません。
- 100g未満の機体への規制 航空法では100g未満の機体(トイドローン等)は一部規制対象外ですが、道路交通法には重量による除外規定はありません。100g未満であっても交通の妨げになる場合は、道路使用許可が必要となります。
- 「包括申請」の限界と「個別申請」の必要性 国道や高速道路など交通量が多い道路の上空やその付近を飛行させる場合、国土交通省からの包括申請ではカバーできない(標準的な許可条件から外れる)ことが多いため、別途個別申請での許可取得が必要になるケースがあります。
- 第三者上空の飛行制限 特定飛行を行う際、原則として第三者(通行人や車両)の上空を飛行させることはできません。
申請手続きの実務:場所・費用・必要書類
申請先
飛行または作業を行う場所を管轄する警察署の交通窓口です。
手数料の納付方法
地域により異なりますが、東京都の事例では以下の通りです。
- 工事・作業に関する申請(1号):2,700円
- それ以外の申請(4号など):2,100円 納付方法は、窓口で渡される「納入通知書」による会計窓口での支払いや、「収入印紙」を申請書に貼付する方法など、自治体のルールに従ってください。
申請時の注意点
- 書類は「正・副」の計2部用意する 申請書だけでなく、図面等の添付書類もすべて2部必要です。「副」は通常、「正」のコピーで問題ありませんが、受領印を受ける大切な控えとなります。
- 現地調査に基づいた正確な図面作成 補助者の配置や立入制限の範囲を記した図面が必要です。Google Mapやストリートビューは現況と異なる場合があるため、必ず現地調査を行い、現況に即した正確な図面を作成することが許可取得への近道です。
トラブルを防ぐための「事前相談」の重要性
「道路を低空で横切るが、許可が必要か判断に迷う」といったグレーゾーンの場合は、事前に管轄の警察署へ相談することが実務上の鉄則です。
事前相談を行うことで、以下のメリットが得られます。
- 通報への迅速な対応:一般市民からの通報があった際、警察が事前に把握していれば現場での混乱や飛行中断を最小限に抑えられます。
- 不必要な職務質問の回避:現場で警察官から職務質問を受け、貴重な撮影時間を浪費するトラブルを防ぐことができます。
まとめ:法令遵守で安全なドローン飛行を
道路上空のドローン飛行において、許可が必要なケースは限定的ですが、判断を誤って無許可飛行を行った場合、道路交通法違反および航空法違反の両方で書類送検されるなどの甚大なリスクを負うことになります。
「原則不要」という言葉を拡大解釈せず、自身の飛行計画が第三者の通行にどのような影響を及ぼすかを客観的に精査してください。判断が難しい場合や、複雑な図面作成・警察との折衝が困難な場合は、ドローン法務の専門家である行政書士への依頼も検討すべきです。
適切な許可を取得し、二重三重の法令遵守(コンプライアンス)を徹底することこそが、プロの操縦者に求められる姿勢です。