イベント上空でドローンを飛ばすには?許可申請のポイントと注意点を徹底解説

1. イントロダクション:イベント空撮の魅力と法規制の現実

ドローンによるイベント演出や空撮は、祭りの熱気やスポーツの躍動感をダイナミックに記録できる手法として、今や集客やプロモーションに欠かせないものとなりました。上空から見下ろす華やかな映像は、見る人に大きな感動を与えます。

しかし、こうした華やかな空撮の裏には、航空法による極めて厳格な規制が存在することをご存知でしょうか。多くの人が集まる場所の上空でドローンを飛ばすことは、万が一の故障や操縦ミスが起きた際、甚大な人身事故につながる恐れがあるためです。安全かつ合法的にイベントを成功させるためには、法的な「正しい知識」に基づいた準備が不可欠です。ドローン法務の専門家が、許可申請の核心を分かりやすく解説します。

2. 「催し場所上空での飛行」とは何か?(定義と具体例)

航空法において規制対象となる「催し場所」とは、特定の場所・日時に、不特定多数の人が集合する場所を指します。ここで重要なのは、「自分の土地(私有地)だから」「地主の許可を得たから」といって、航空法の規制が免除されるわけではないという点です。空域が存在する限り、人が集まる場所であれば一律に法律が適用されます。

判断基準のポイント

以下の要素を総合的に勘案して判断されます。

  • 特定の日時・場所で開催されるか: 自然発生的な人混み(信号待ち等)は含まれません。
  • 主催者の意図があるか: 主催者が特定の目的を持って開催しているか。
  • 人数と密度: 数十人規模であっても、一定エリアに人が集中していれば該当します。

3. なぜ許可が必要なのか?(リスクと罰則)

イベント上空での飛行は、落下時に人へ危害を及ぼす蓋然性が極めて高いため、国土交通省からの個別許可が義務付けられています。

過去には、2017年に岐阜県で開催されたフェスにてお菓子を撒いていた無許可のドローンが墜落し、6人が負傷する事故が発生しました。「楽しませるための演出」であっても、一歩間違えれば重大な事故を招くのです。

無許可飛行による5つの重大なリスク

  1. 航空法違反の罰則: 許可を得ずに飛行させた場合、即座に法的責任を問われます。
  2. 人身事故の発生: 落下により、イベント参加者に怪我をさせる物理的リスク。
  3. 損害賠償: 被害者に対する民事上の莫大な損害賠償責任が発生します。
  4. 社会的信用の喪失: 事故や違反がSNS等で拡散され、主催者の信用が失墜します。
  5. ライセンス停止: 操縦者資格の停止など、プロとしての活動が不可能になります。

航空法違反時の具体的な罰則

無許可で催し場所上空を飛行させた場合、航空法違反として最大1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

4. 飛行許可取得までの5つのステップ

イベント上空での飛行許可を得るための標準的なプロセスは以下の通りです。

  1. 主催者との調整: 催しの規模、会場レイアウト、立入禁止区画の設定を綿密に行います。
  2. 飛行計画の作成: 日時、経路、操縦者情報、補助者の配置検討などを具体化します。
  3. DIPS 2.0での申請: 国土交通省のオンライン申請システム「DIPS 2.0(ドローン飛行許可の公式窓口)」を通じて個別申請を行います。
  4. 関係機関への通報: 飛行場所を管轄する地元警察署や消防署へ、事前に情報を共有します。
  5. 当日の安全運用: 周囲への周知を徹底します。なお、飛行経路下に想定外の人混みが発生した場合は、直ちに飛行を停止するという緊急対応も求められます。

申請期限の目安

審査には時間を要するため、飛行開始予定日の最低10開庁日(土日祝を除く10日)前までに提出が必要です。不備修正の時間を考慮し、3〜4週間前には着手することを強く推奨します。

5. 厳格な審査基準と安全対策

イベント上空の飛行は、リスクの高さから「カテゴリーII飛行」に分類されることが多く、国土交通省の「審査要領」に基づいた厳しい基準をクリアしなければなりません。

高度別の立入禁止区画(オフセット距離)基準

第三者の安全を確保するための「セーフティー・バッファー(水平分離距離)」として、飛行範囲の外周から以下の距離を立ち入り禁止にする必要があります。

飛行高度飛行範囲外周からの必要距離(オフセット距離)
20m未満30m以上
20m以上 50m未満40m以上
50m以上 100m未満60m以上
100m以上 150m未満70m以上
150m以上落下距離(ただし最低70m)

機体と操縦者の要件(申請の前提条件)

  • 安全機能: プロペラガードの装着が原則必須です。また、衝突防止センサー等の危害軽減機能が求められます。
  • 飛行実績: 想定される運用による10回以上の離着陸を含む、計3時間以上の飛行実績を有していることが、許可申請を行うための必須要件となります。
  • 補助者の配置: 飛行状況と気象、第三者の侵入を常に監視する補助者の配置が不可欠です。

6. プロ(行政書士)に依頼するメリット

イベント上空の許可申請は、通常の包括申請とは比較にならないほど難易度が高くなります。行政書士は、単に書類を代筆するだけでなく、国土交通省が定める複雑な「審査要領」を読み解き、個別のケースに合わせた最適な安全管理のアドバイスを提供します。

行政書士がサポートできる主な業務:

  • 専門用語を網羅した正確な書類作成とDIPS 2.0申請代行
  • 主催者や警察・消防といった関係機関との法的な調整・通報サポート
  • 「審査要領」に合致した立入禁止区画や安全対策のコンサルティング

専門家を活用することは、許可取得の確実性を高めるだけでなく、万が一の際の法的リスクヘッジにもなり、安全で感動的な空撮を成功させるための最短ルートとなります。

7. まとめ

イベント空撮を安全に実施するためのポイントは以下の3点です。

イベント空撮の重要チェックポイント

  • 法的な定義の遵守: 私有地であっても不特定多数が集まれば「催し場所」として許可が必要です。
  • 10開庁日前までの申請: 余裕を持って3〜4週間前にはDIPS 2.0での手続きを開始しましょう。
  • 高度に応じた安全距離の確保: 審査要領に基づき、正確な立入禁止区画(オフセット距離)を設定・運用してください。

「安全第一」の運用こそが、素晴らしい映像を残すための唯一の条件です。手続きに不安がある場合や、プロフェッショナルな視点での安全対策が必要な場合は、お気軽にご相談ください。