【完全解説】イベント・催し場所上空でドローンを飛ばすには?許可承認の条件とDIPS2.0申請手順①

1. 導入:イベント(催し場所)上空でのドローン飛行に必要な基礎知識

スポーツ大会や運動会、祭礼、屋外コンサートなどのイベント会場でドローン撮影を行う場合、年間を通じて複数の場所での飛行をまとめて申請する一般的な「包括申請」では対応できません。多数の観客や参加者が集合する場所の上空飛行はリスクが極めて高いため、飛行を実施するごとに個別の飛行計画に基づく個別申請を行い、国土交通大臣から「飛行承認」を得ることが法的義務となっています。

また、単にDIPS2.0(ドローン情報基盤システム)を通じて申請書類を提出し承認を受けるだけでなく、事前にイベント主催者と綿密な安全協議を行い、書面での合意や観客への周知、さらには現場での補助者の配置や飛行高度に応じた「立入禁止区域」の設定など、厳格な安全対策を完了させておく必要があります。

本書では、ドローン航空法および行政手続きの専門家の立場から、催し場所上空での飛行に必要な法理、具体的な承認要件、DIPS2.0での補正指示(差し戻し)を未然に防ぐ申請手順、当日の運用・罰則規定に至るまで徹底的に解説します。

この記事で学べるポイント

  • 「催し場所上空」の航空法上の定義と、包括申請が一切利用できない理由
  • 空域の「許可」と飛行方法の「承認」の違い、および同時に必要となる重複要件
  • 単なる参加者と航空法上の「関係者(間接関与者)」を分ける厳格な法的基準
  • 飛行高度(20m未満〜150m未満)ごとに求められる「立入禁止区域」の距離基準
  • DIPS2.0申請で補正指示を回避するための「入力OK/NG例」と「空域図の5大作図要件」
  • 承認交付後の法的義務(飛行計画の通報等)と、アルコール影響下飛行を含む厳罰規定

2. 「催し場所上空の飛行」とは?航空法における定義と具体例

2.1 イベント上空(催し場所)の3要素と法的趣旨

航空法第132条の86第2項第4号において、催し場所上空でのドローン飛行は以下のように制限されています。

航空法 第132条の86第2項第4号 祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること。

出典:e-Gov法令検索(現行条文)

航空法がこの規定を設けている法的趣旨について、航空局のQ&Aでは次のように説明されています。

【航空局Q&Aにおける趣旨説明】 無人航空機を飛行させた場合に故障等により落下すれば、人に危害を及ぼす可能性が高い。どのような場合が「多数の者の集合する催し」に該当するかについては、催し場所上空において無人航空機が落下することにより地上の人に危害を及ぼすことを防止するという趣旨に照らし、集合する者の人数や密度だけでなく、特定の場所や日時に開催されるものかどうか、また、主催者の意図等も勘案して総合的に判断される。

つまり、単に集まっている人数や密度だけで機械的に決まるのではなく、以下の「催し場所の3要素」を軸に総合的に判断されます。

  1. 特定の日時が設定されて開催されるものか
  2. 特定の場所を区切って開催されるものか
  3. 一度に数十人以上の集合が見込まれるものかどうか

2.2 該当するケース・該当しないケースの比較

自分の飛行計画が「催し場所上空」に該当するか否かは、以下の判断ポイントと対比表を参考に判定してください。

該当する例該当しない例判断のポイント・理由(特定日時・場所・集客性等)
プロスポーツの試合・スポーツ大会・運動会日常的な公園の利用特定の日時・グラウンド等の指定場所で開催され、選手・保護者・観客等の「多数の集合」が計画されているため。
祭礼・縁日・町内会の盆踊り大会通常の通勤・通学神社境内や特設会場等において特定日時に開催され、意図的な集客・出店等に伴う混雑が生じるため。
屋外コンサート・音楽フェス・花火大会商業施設の通常営業主催者が告知を行い、チケット購入者や観覧客が特定の日時・エリアに集中して滞留するため。
展示会・見本市・モーターショー・パレード自然発生的な混雑(人混み・信号待ち)イベントとして主催者の意図した集客活動が存在するため。単なる人混みは催しではない(※ただしDID規制の対象)。
デモ行進(示威行為)少人数の集まり(数人〜十数人のプライベートな集まり)集会・デモとして日時・経路が定められ、集団を形成しているため。

※集客イベントではない自然発生的な街頭の混雑や駅前の混雑は「催し場所」には当たりません。ただし、それらの場所は多くの場合「人口集中地区(DID)上空」に該当するため、第132条の85に基づく「空域の許可」が別途必要となります。


3. 混同しやすい法概念:「許可」と「承認」の違い

ドローンに関する行政手続きを行う際、申請者が最初につまずきやすいのが「許可」と「承認」の使い分けです。航空法上の規制は、「どこで飛ばすか(空域の規制)」と「どう飛ばすか(飛行方法の規制)」の2種類に明確に分類されています。

規制の区分該当条文手続きの名称規制対象・具体的状況
空域の規制航空法第132条の85許可どこで飛ばすか(空港周辺、150m以上の高空、人口集中地区(DID)上空)
方法の規制航空法第132条の86承認どう飛ばすか(夜間飛行、目視外飛行、人・物件30m未満、催し場所上空、危険物輸送、物件投下)

催し場所上空での飛行規制は第132条の86第2項第4号に規定されているため、必要な法的手続きは「許可」ではなく**「承認」**となります。

条文構造上も「催し場所の上空で飛ばしてはならない」という禁止規定ではなく、「催し場所の上空以外の空域で飛行させなければならない」という飛行方法の義務付けとなっており、この規定によらずにイベント会場で飛行させるために「国土交通大臣の承認」を得るという法理になっています。


4. 1つの承認だけでは足りない?重複する申請要件と危険物・投下のルール

4.1 同時に必要となる追加の承認(人・物件30m未満等)

実務上、催し場所の上空でドローンを飛ばす場合、「催し場所上空の飛行承認(第4号)」単体で申請が完結することはほぼありません。観客やスタッフ、ステージ設備・テント等との距離が30m未満に接近することが避けられないため、航空法施行規則第236条の79に定める「人又は物件との間に30mの距離を保てない飛行(第3号)」の承認もセットで必要になります。

さらに、撮影条件や演出に応じて以下の承認・許可が重なって必要となります。

飛行の状況重ねて必要となる号数・手続き重複が必要となる実務的・定性的背景
昼間・目視内・催し上空での基本撮影第4号(催し場所)+ 第3号(人・物件30m離隔)イベント会場では離着陸時や観客・設営物件の付近を通過するため、ほぼ100% 第3号(30m未満)の承認が同時に必要となります。
夜間イベント(花火大会・夜間フェス等)第4号 + 第3号 + 第1号(夜間飛行)日没後のイベントではライトアップや花火演出の撮影を行うため、日出から日没までの原則を解除する第1号承認が必要となります。
モニターやゴーグル確認による撮影第4号 + 第3号 + 第2号(目視外飛行)操縦者が被写体や画角をリアルタイムモニターで注視しながら撮影する場合、目視外飛行(第2号)の承認が重複して発生します。
DID(人口集中地区)内での開催上記承認 + 第132条の85第1項第2号(DID許可)市街地や公園等のDID地区でイベントが開催される場合、飛行方法の「承認」に加え、空域の「許可」が同時に必須となります。

【行政書士のアドバイス:重複申請と個別申請の罠】 「催し場所上空の承認」を持っているからといって、夜間撮影やモニター撮影が無条件で許されるわけではありません。申請時にDIPS上で該当する全てのチェックボックス(第1号〜第4号等)を選択し、それぞれについて安全基準(夜間照明、補助者の目視監視等)をクリアしなければ補正指示が出されます。また、これらの要件が重なる催し場所飛行は包括申請の対象外であり、特定の日時・場所を明記した「個別申請」が絶対条件となります。

4.2 危険物輸送・物件投下とバッテリーの扱い

イベントの演出において、ドローンから紙吹雪や花びらを撒く、あるいは演出用花火や発煙筒を載せて飛行させる場合は、以下の規制(第5号・第6号)が直ちに適用されます。

  • 第5号:危険物輸送の禁止(爆発性・易燃性を有する物件等の輸送)
  • 第6号:物件投下の禁止(地上や水上の人・物件に危害を及ぼす恐れがある投下)

これらを行う場合、第5号や第6号の個別の承認手続きがさらに必要となります。

ここで実務上よく受ける質問が、「機体に搭載しているリチウムポリマー(LiPo)バッテリーは危険物輸送(第5号)に該当するのではないか?」という疑問です。これについては航空法施行規則第236条の80第2項に明確な除外規定が存在します。

航空法施行規則 第236条の80第2項 前項の規定にかかわらず、無人航空機の飛行のため当該無人航空機で輸送する物件は、法第百三十二条の八十六第二項第五号の国土交通省令で定める物件に含まれないものとする。

つまり、機体自身の動力を得るために搭載・積載しているバッテリーや燃料は「輸送」の対象から除外されているため、LiPoバッテリーを装着して飛行させること自体が第5号違反になることはありません。


5. 「第三者」と「関係者(間接関与者)」の明確な違い

イベント撮影の現場で最もトラブルや法令違反を起こしやすいのが、「第三者」と「関係者」の区別に関する誤解です。現場でよく聞かれる「観客全員にチラシを配ったから」「チケットの利用規約に『撮影あり』と記載したから全員関係者だ」という主張は、行政上・法律上一切認められません。

航空法における主体の分類は、以下のように極めて厳格に規定されています。

  • 第三者
    • 無人航空機の飛行に直接、または間接的に関与していないすべての者。
  • 直接関与者(関係者)
    • 操縦者、操縦を行う可能性のある者、および安全確保のために配置された補助者など、飛行に直接従事する人員。
  • 間接関与者(関係者)
    • 飛行目的について直接関与者と共通の理解を持ち、以下の4要件をすべて満たす者。
      1. 操縦者の判断:操縦者が、対象者について飛行目的の全部または一部に関与していると正しく判断していること。
      2. 明確な指示と安全注意:操縦者等から、予定外の緊急事態が発生した際に避難すべき明確な指示と安全上の注意を事前に受けていること。
      3. 理解確認の実施:操縦者側が、上記の指示および安全注意が対象者に適切に理解されていることを事前に確認していること。
      4. 自発的決定権(拒否権):対象者が、飛行目的に関与するかどうか(撮影エリアに入るか否か)を自らの意志で決定できること。

【専門家の眼:観客全員を「関係者」に仕立てる言説の法的危険性】 数百〜数千人が集まる運動会や音楽フェスで、観客全員に緊急避難指示を理解させ、それを操縦者が一人ひとり確認し、拒否権を与えることは事実上不可能です。したがって、「観客を関係者とみなして催し場所規制を回避する」という運用は現場では成立しないと考えてください。イベント会場に観客(第三者)が存在する前提で、適切な「立入禁止区域」を設定して申請を行うのが唯一の正当な手続きです。