【完全解説】イベント・催し場所上空でドローンを飛ばすには?許可承認の条件とDIPS2.0申請手順②

6. 飛行承認を受けるための安全要件と「立入禁止区域」の設定

6.1 機体・運用の安全基準

催し場所上空での飛行承認をDIPS2.0で得るためには、以下の安全対策を申請書および運用マニュアルに組み込む必要があります。

  • プロペラガードの装着:接触や落下時の危害を軽減するため、全周を覆うプロペラガード等の装着が必須(装着した機体写真の添付が必要)。
  • 補助者の配置:飛行経路全体および第三者の動線を常時監視できる位置に適切な人数の補助者を配置する。
  • 風速限界の遵守(標準マニュアルの規定):
    • 風速5m/s以上の場合は即座に飛行を中止する。
    • 飛行速度と風速の和が7m/s以上となる場合も飛行を行わない。
    • ※これらは「航空局標準マニュアル01」において定められた運用限界であり、遵守が法的な承認条件となります。
  • 飛行経路の事前設定:可能な限り人の真上を避けた経路を設定し、異常発生時の緊急着陸地点をあらかじめ定めておく。
  • 主催者との事前調整と周知文書:飛行目的・日時・範囲についての合意書を取り交わし、観客に対してアナウンスや掲示物でドローン飛行を事前周知する。
  • 賠償責任保険への加入:万が一の対人・対物事故に備え、十分な補償額の保険加入が必須。

6.2 飛行高度に応じた「立入禁止区域」の距離基準

催し場所上空での個別承認においては、通常の立入管理措置とは異なり、飛行高度ごとに定められた明確な**「立入禁止区域(外周からの離隔距離)」**を確保しなければなりません。

飛行範囲の外周から第三者の立ち入りを完全に遮断すべき距離は以下の通りです。

予定する最大飛行高度保有すべき立入禁止区画(飛行範囲の外周からの距離)
20m未満飛行範囲の外周から30m以内の範囲
20m以上 50m未満飛行範囲の外周から40m以内の範囲
50m以上 100m未満飛行範囲の外周から60m以内の範囲
100m以上 150m未満飛行範囲の外周から70m以内の範囲

※設定した立入禁止区域の境界線上にはコーンやトラロープ、看板等を設置し、補助者を立ち会わせて第三者が区画内に立ち入らないよう厳重に監視する必要があります。


7. 資格・機体認証による適用除外と現実的な注意点

航空法第132条の86第2項の柱書きには、無人航空機操縦士の「技能証明(国家資格)」と「機体認証」を取得している場合の適用除外(カテゴリーIIB/III飛行の特例)が定められています。

  • 立入管理措置を講じる場合(カテゴリーII飛行):技能証明(一等または二等) + 機体認証(第一種または第二種)
  • 立入管理措置を講じない場合(カテゴリーIII飛行):一等無人航空機操縦士 + 第一種機体認証

理論上、一等資格と第一種機体認証を組み合わせれば、催し場所上空であっても承認申請を免除して飛行させることが制度上可能とされています。しかし、実際のイベント現場においてこの適用除外を適用することは現実的ではありません。

第一に、大勢の観客が行き交うイベント会場において、「立入管理措置を講じずに第三者上空を飛ぶ(カテゴリーIII)」には厳格な運航体制と個別の運航許可等が必要となり、ハードルが極めて高いのが実情です。

第二に、立入管理措置を講じて適用除外を狙う場合であっても、航空法第132条の87に基づき、**「飛行中に第三者の立ち入り、または立ち入る恐れを確認した場合は直ちに飛行を停止する義務」**が操縦者に課されます。

観客や子供たちが予想外の動きを見せるイベント会場では、少しでも人が立入禁止区域に接近した瞬間に着陸またはホバリング停止を行わなければならず、撮影運用が完全に破綻するリスクを抱えることになります。そのため、国家資格を保有しているプロであっても、事前に個別承認を取得し、万全の立入禁止区域を構築して臨むのが実務上の定石です。


8. 【実践】DIPS2.0での申請手続き 12ステップガイド

DIPS2.0を通じて「催し場所上空」の個別承認申請を補正指示なしで通過させるための具体的手順を解説します。

  1. 飛行空域の選択
    • DIPS2.0の「飛行情報の入力」画面で「催し場所上空」にチェックを入れます(DID地区内の場合は「人又は家屋の密集している地域の上空」にも同時チェック)。
  2. リスク管理の選択
    • リスク管理項目にて、「補助者を配置する」および「立入禁止区画を設定する」の両方に必ずチェックを入れます。
  3. 最大飛行高度の入力
    • 撮影で予定する最大高度(例:19m)を入力します。ここで設定した高度に基づき、必要となる立入禁止距離(30m〜70m)が自動的に確定します。
  4. 催し情報の入力と「調整結果」の記述
    • 催しの名称(例:第〇回〇〇市民運動会)、主催者名を入力します。
    • 「調整結果」の記載欄には、補正指示を防ぐため具体的な協議結果を記述します。
  5. 特定日時の入力
    • イベントの開催日・予備日を特定して具体的に入力します(※「1年間」などの期間指定はできません)。
  6. 飛行場所・経路の指定
    • 該当する住所を入力し、地図画面上で大まかな飛行エリアを指定します。
  7. 機体・操縦者情報およびプロペラガード画像の登録
    • 使用する登録機体と操縦者を選択します。追加基準の適合性確認において、プロペラガードを実際に装着した機体全体の写真をアップロードします。
  8. 飛行マニュアルの選択
    • 選択肢から**「航空局標準マニュアル01」**を指定します。
  9. 保険情報の入力
    • 対人・対物賠償責任保険の保険会社名、証券番号、補償金額(1億円以上推奨)を入力します。
  10. 「特記事項」への具体的な安全対策の記述
    • 審査官が重点確認する項目です。具体的な現場運用を明記します。
  11. 詳細な空域図(添付ファイル)のアップロード
    • 国土地理院地図等を用いて作成した高精度の「空域図」を添付します。
  12. 申請内容の最終確認と送信
    • 入力漏れがないか確認し送信します。※イベント上空の審査には土日祝を除く10営業日以上かかるため、飛行日の3週間前には申請を完了させてください。

【行政書士のアドバイス:マニュアル選択の落とし穴】 DIPS2.0で「航空局標準マニュアル02(場所を特定しない申請用)」を選択すると、100%補正指示が出されます。マニュアル02は催し場所上空飛行に対応していません。必ず**「航空局標準マニュアル01」**を選択するか、独自に作成した「自作マニュアル」を添付してください。

審査を補正なしで通過するための「OK/NG記述例」

申請画面の「調整結果の入力欄」や「特記事項」において、抽象的な表現を書くと審査官から即座に補正指示が届きます。以下の対比表を参考に正確に記述してください。

項目審査で落とされるNG記述例確実に一発通過するOK記述例
Step 4:調整結果の入力欄「主催者と協議し、承諾を得ました。」(抽象的で不十分)「主催者(〇〇実行委員会・代表〇〇氏)と事前に安全協議を行い、〇月〇日付で飛行承諾書を取り交わした。当日は主催者により開会式および場内アナウンスにて観客へドローン飛行の旨を周知する。」
Step 10:特記事項の記載欄「安全に留意し、問題があれば着陸します。」(具体性なし)「立入禁止区画内(飛行外周から30m)の建物・観客に対して事前に補助員が周知徹底を行う。飛行中は専用補助員2名を配置して動線を監視し、第三者の侵入の恐れを察知した場合は直ちに飛行を中断して安全な待避場所に着陸させる。」

Step 11:詳細な空域図に必要な「5大作図要素」

添付する空域図は、国土地理院地図やGoogle Mapの航空写真等をベースに作成します。以下の5つの要素が描画されていない場合、図面の再提出を求められます。

【詳細な空域図に必須の5大作図要素】
① 飛行経路・範囲の明示(赤色の実線や枠で指定)
② 高度に応じた立入禁止区域の境界線(例:高度20m未満なら赤枠外周から30mの離隔ラインを点線等で描画)
③ 補助者の配置地点(「補助者A」「補助者B」などのピンマークと監視向き)
④ 離着陸場所(「H」マークや緑色の円で明記)
⑤ 周囲の構造物・観客席・本部テントとの位置関係(各対象物との離隔距離の数値を記載)

9. 承認取得後・当日の運用義務と違反時の「罰則」

9.1 承認取得後・飛行前の必須手続き

DIPS2.0で無事に「飛行承認書」が発行されても、それだけで当日にドローンを飛ばすことはできません。法令上、以下の手続きと準備が義務付けられています。

  • 飛行計画の通報(航空法第132条の88第1項)
    • 特定飛行を行う者は、飛行を開始する前にDIPS2.0上で日時・経路・操縦者情報を登録し、「飛行計画」を国土交通大臣に通報しなければなりません。承認取得とは別の独立した法的義務です。
  • 当日の気象確認と飛行可否判断
    • 現場で風速計を用い、風速5m/s未満であることを確認します。雨天や濃霧、基準を超える強風時は承認書を持っていても飛行させてはなりません。
  • 日常点検の実施と記録
    • プロペラガードの固定状態、バッテリーの劣化・膨張、通信系統の動作確認を行い、点検結果を記録します。
  • 飛行日誌の備え付けと記載(航空法第132条の89)
    • 「飛行前点検記録」「飛行実績の記録」「日常点検・整備の記録」の3点を正しく飛行日誌に記載・保存する義務があります。
  • 承認条件の絶対遵守(航空法第132条の86第3項)
    • 条文上「その承認を受けたところに従い、これを飛行させなければならない」と定められており、承認書に記載された飛行経路や時間を逸脱した飛行は違法となります。

9.2 違反行為と罰則一覧

航空法に違反してイベント上空で悪質な飛行を行った場合、刑事罰が適用され、警察による摘発および罰則の対象となります。

違反行為の内容対応する法的罰則適用条文・実務上の注意点
事故発生時に危険防止のための緊急措置を講じなかった2年以下の拘禁刑 または 100万円以下の罰金航空法第157条の6
無登録の機体で航空の用に供した1年以下の拘禁刑 または 50万円以下の罰金航空法第157条の7第1項第1号
アルコール又は薬物の影響下で公共の場所の上空を飛行させた1年以下の拘禁刑 または 30万円以下の罰金航空法第157条の8<br>※イベント会場は「公共の場所」に該当します。イベント撤収作業中や、打ち上げ懇親会での飲酒後のフライト等も厳しく処罰されます。
飛行計画を通報しないで特定飛行を行った30万円以下の罰金航空法第157条の10第1項第10号<br>※承認を得ていても、DIPSでの事前に飛行計画通報を怠ると即座に罰則対象となります。
飛行計画に関する大臣の指示に従わなかった30万円以下の罰金航空法第157条の10第1項第11号
事故の報告を怠った/虚偽の報告をした30万円以下の罰金航空法第157条の10第2項
飛行日誌を備えなかった/記載しなかった/虚偽の記載をした10万円以下の罰金航空法第157条の11第2号・第3号
技能証明書(国家資格)を携帯せずに特定飛行を行った10万円以下の罰金航空法第157条の11第1号

10. よくある質問(FAQ)とつまずきポイントの解消

Q. 人が多いだけの場所(駅前のスクランブル交差点や歩行者天国など)は「催し場所」になりますか? A. 「催し場所(第4号)」には該当しませんが、DID規制等の対象になります。 航空法第132条の86第2項第4号の要件は「催し(イベント)が行われている場所」です。特定の日時・主催者による集客イベントではない自然発生的な人混みは第4号の催し場所には当たりません。ただし、駅前や繁華街の多くは人口集中地区(DID)に該当するため、第132条の85に基づく「DID上空の飛行許可」が別途必須となります。

Q. 一等無人航空機操縦士の資格を持っていれば、申請なしで無条件でイベント上空を飛ばせますか? A. 無条件で飛ばすことはできません。 一等技能証明+第一種機体認証を保有していれば、制度上「立入管理措置を講じない飛行(カテゴリーIII)」の枠組みは用意されています。しかし、現場で立入管理措置を講じて飛ばす場合は、航空法第132条の87に基づき「第三者の侵入やその恐れを確認した際の直ちの中止義務」が発生します。また、主催者との協議や周知義務、飛行計画の通報(第132条の88)は資格の有無にかかわらず免除されません。

Q. 包括申請(1年間・全国)の許可承認書を持っています。これで運動会の撮影に行っても大丈夫ですか? A. 絶対に不可能です。 包括申請で取得した許可承認書には、必ず「催し場所上空での飛行は除く」という条件が付されています。催し場所上空飛行はリスクが高いため、飛行する日時・場所・主催者との調整結果・安全対策・詳細な経路図を明示した「個別申請」を行わなければ違法飛行となります。

Q. 飛行承認書を取得していれば、当日の天候が雨や強風(風速6m/s)であっても飛ばして良いですか? A. 飛ばすことはできません。法違反となります。 承認書が得られても、運用マニュアルに規定された「風速5m/s以上で飛行中止」という安全基準を守る義務(第132条の86第3項:承認に従う義務)があります。天候条件を満たさない中でフライトを実施した場合、承認条件違反として行政指導や罰則の対象となります。


11. まとめ:安全なイベント上空飛行に向けたポイント

イベント・催し場所上空でのドローン飛行は、機体の万が一の落下時に地上の多数の人々へ重大な被害を及ぼす危険性があるため、航空法上の特定飛行の中でも最高レベルの厳格さで審査が行われます。

安全にイベント撮影を完了させ、法的トラブルを未然に防ぐためには、以下の**「3大実務プロセス」**を確実に実行してください。

【イベント上空飛行を成功させる3大実務プロセス】

1. 事前の主催者調整と承諾文書化
   ・目的・日時・飛行範囲の合意書の作成
   ・観客への事前アナウンス・掲示による周知徹底

2. DIPS2.0での「個別申請」の一発取得
   ・包括申請は不可。「航空局標準マニュアル01」を指定
   ・高度に応じた「立入禁止区域(30m〜70m)」とプロペラガードの装着
   ・「5大要素」を網羅した詳細空域図の添付と具体的特記事項の記述
   ・補正指示を見込んで「飛行日の3週間前」には申請を完了させる

3. 現場での法令遵守と当日の運用義務
   ・飛行前の「飛行計画の通報(DIPS)」の実施
   ・風速計による気象確認(5m/s以上は即中止)
   ・専用補助員による動線監視と飛行日誌の記録
   ・飲酒操縦の絶対禁止(撤収作業時のフライト含む)

正しい法知識と徹底した安全管理のもと、事前準備に十分な時間を確保して、安全で高品質なイベント撮影を実現させてください。