【ドローンの夜間飛行ガイド:航空法のルールと許可申請の落とし穴を徹底解説】

夜景空撮や夜間の設備点検など、ドローンの夜間飛行は日中にはない表現力と実用性をもたらします。しかしながら実は、夜間は「見えないリスク」の塊です。視認性の低下は障害物確認を困難にし、一歩間違えれば重大な事故に直結します。

ドローンの夜間飛行は航空法で厳格に規制された「特定飛行」に該当します。法令を正しく理解せずに飛行させた場合、航空法違反として50万円以下の罰金(刑事罰)に処せられる可能性があるほか、機体認証の取り消しなどの行政処分を受けるリスクもあります。


1. 「夜間飛行」の法的定義と厳格な時刻管理

航空法第132条の86に基づき、無人航空機の飛行は原則として「日出から日没まで」に制限されています。このルールに「例外」や「これくらいなら大丈夫」という主観的な判断は通用しません。

「日出から日没まで」の正確な基準

法的な「夜間」の基準は、周囲の明るさではなく、国立天文台が発表する時刻が絶対的な基準です。たとえ夕焼けで空が明るく見えていたとしても、国立天文台が定める日没時刻を1分でも過ぎれば、それは法的な「夜間飛行」となります。

時刻の確認手順:国立天文台「こよみの計算」

フライト当日の正確な日出・日没時刻を確認するために、以下の手順を必ず実行してください。

  1. システムへアクセス国立天文台 暦計算室「こよみの計算」
  2. 地点の厳密な指定:地域によって時刻は分単位で異なります。「地理院地図で選ぶ」を活用し、実際に飛行させる座標をピンポイントで指定することを推奨します。
  3. 「出」と「入り」の秒単位の意識:確認した時刻に基づき、余裕を持った飛行計画を立ててください。

2. 夜間飛行を合法的に行う3つの選択肢

現在、日本国内で夜間飛行を行うには、主に以下の3つが存在します。

方法内容とメリット
技能証明 + 機体認証【申請不要パス】 国家資格(限定解除)の保有と認証機(例:DJI Mini 4 Pro等)を使用。カテゴリーII飛行の条件を満たせば、国土交通大臣への許可・承認申請が不要となります。
係留飛行十分な強度の紐等(30m以内)で機体を係留し、立入管理措置を講じるケース。この場合も原則として許可・承認が不要となります。
国土交通大臣の承認申請DIPS 2.0を通じて事前に承認を得る方法。現在最も一般的です。

3. 【重要】航空法の審査要領および標準マニュアルが改正され、夜間飛行の要件が大きく変わりました。

  • 「距離=高度」ルールの廃止と代替措置: 以前は「飛行高度と同じ距離の半径内に第三者がいないこと」という安全基準がありましたが、これが撤廃されました。その代わり、より実効性の高い「日中の事前経路確認」が義務化されています。
  • 日中の事前経路確認の義務化: 夜間飛行を行う際は、必ず明るいうちに飛行経路および周辺の障害物(電線、樹木、看板等)を直接目視で確認し、安全な経路を選定しなければなりません。これは努力義務ではなく、マニュアル遵守事項としての義務です。
  • 訓練修了の必須化: 操縦者には、夜間特有の視認性低下や距離感のズレに対応するための「夜間飛行訓練」を修了していることが厳格に求められます。

4. 「包括申請」利用者が陥る2つの致命的な落とし穴

多くのユーザーが利用する「飛行場所と日時を特定しない包括申請(標準マニュアル02使用)」には、以下の重大な制限があります。これに違反すると無許可飛行と同等の扱いになります。

  1. 人口集中地区(DID × 夜間飛行の禁止 標準マニュアル02では「人又は家屋が密集している地域(DID)の上空では夜間飛行は行わない」と明記されています。包括申請でDIDと夜間の両方の承認を得ていても、この組み合わせでの飛行は不可です。
  2. 目視外飛行 × 夜間飛行の禁止 夜間は「機体の灯火を直接肉眼で認識できる範囲内」に飛行が限定されます。FPVゴーグルやモニターのみを頼りにした目視外飛行との併用は認められません。

【アドバイス】 夜間にDIDで撮影したい、あるいは夜間に目視外飛行(補助者なし等)を行いたい場合は、包括申請ではなく「個別申請(場所・日時の特定)」を行い、独自の安全管理策を盛り込んだ「独自マニュアル」を提出して承認を得る必要があります。


5. 機体に必要な「灯火(ライト)」の要件と運用

夜間飛行の承認を受けるための必須要件である「灯火」は、単なる照明ではなく「ナビゲーション(航法)」のための装備です。

  • 必須基準:機体の向き(機首方向)を正確に視認できる灯火を有していること。※照明で飛行範囲全体が昼間同等に照らされている場合(スタジアム等)は例外となる余地がありますが、夜間飛行の承認申請自体は依然として必要です。
  • 空間識失調(バーティゴ)への対策: 暗闇では、ドローンの光が星や街明かりと混同され、機体の姿勢が分からなくなる「空間識失調」に陥るリスクがあります。
    • 色分けの推奨:航空機に倣い、左に「赤」、右に「緑」、尾部に「白」を配置することで、瞬時に機首方向を識別可能にします。
    • ストロボ機能:背景の街明かりに紛れないよう、高輝度な点滅機能を持つライトを選定してください。
    • 取り付けの注意:重心バランスや各種センサー、プロペラへの干渉を避ける配置が、プロの機体整備の基本です。

6. 安全な夜間フライトの実践チェックリスト

  1. 補助者の配置:操縦者がモニターを確認する間、機体を肉眼で常時監視し、接近する航空機や第三者を警戒する補助者の存在は不可欠です。
  2. 日中のロケハン(義務):夜間には完全に消失する電線や細い枝を、明るいうちに写真やメモで記録し、安全な飛行高度を決定します。
  3. 飛行日誌の作成義務: 特定飛行を行った後は、速やかに飛行日誌への記録を行ってください。飛行日誌の作成を怠ったり、虚偽の記載をした場合は10万円以下の過料という罰則(行政罰)の対象となります。

7. まとめ:法令遵守で安全な夜間撮影を

夜間飛行における「自分は見えているから大丈夫」という主観的な過信は、事故と法令違反の入り口です。新基準により、ドローン運用の社会的責任はさらに重くなっています。

「特定飛行」としての義務(飛行計画の通報、飛行日誌の作成)を完璧にこなし、日中のロケハンを徹底すること。これが、プロとして安全・合法・高画質な夜間飛行を実現するための唯一の正解です。ルールを正しく守ることで、夜間空撮の素晴らしい可能性を広げていきましょう。