【2026年版】ドローン包括申請と個別申請を徹底解説

1. はじめに:ドローン飛行許可申請の重要性

ドローンビジネスを円滑に進める上で、避けては通れないのが「飛行許可申請」の実務です。航空法において、空の安全を損なう恐れのある特定の飛行(特定飛行)を行う際は、あらかじめ国土交通大臣の許可や承認を得ることが義務付けられています。

許可を得ずに特定飛行を行った場合、厳しい罰則が科されるだけでなく、事業者としての社会的信用を失うリスクがあります。本ガイドでは、ドローン法務に精通した行政書士の視点から、実務で主流となる「包括申請」と「個別申請」の違い、そして2026年現在の最新ルールを徹底解説します。

2. 基礎知識:申請が必要な「特定飛行」10項目

ドローンの飛行において、以下の「飛行する空域」または「飛行の方法」のいずれかに該当する場合、航空法に基づく手続きが必要です。

① 飛行する空域(航空法第132条の85)

  1. 人口集中地区(DID)の上空: 国勢調査に基づき設定された、人や家屋が密集する地域。
  2. 空港等の周辺の上空: 航空機の安全な離着陸を妨げる恐れのある空域。
  3. 高度150m以上の空域: 地表または水面から150m以上の高さ。
  4. 緊急用務空域: 災害時の捜索・救助活動のために緊急に指定される空域(原則飛行禁止)。

② 飛行の方法(航空法第132条の86)

  1. 夜間飛行: 日没から日の出までの飛行。
  2. 目視外飛行: 操縦者が機体を直接見ず、モニター越し等で操縦する飛行。
  3. 人または物件から30m未満の飛行: 第三者やその建物・車両等との距離が30m未満。
  4. 催し場所(イベント等)上空での飛行: 祭礼や縁日、展示会など多数の人が集まる場所。
  5. 危険物の輸送: 爆発物や有害物質などの運搬。
  6. 物件の投下: 水や農薬の散布、荷物の切り離しなど。

※特定飛行に該当しない場合でも、「小型無人機等飛行禁止法」による重要施設周辺の制限や、各自治体の条例が適用される場合があります。常に多角的な法的確認が求められます。

3. 「包括申請」と「個別申請」の徹底比較

ビジネスの現場では、いかに効率よく許可を運用するかが重要です。以下の比較表で、両者の性質の違いを確認してください。

項目名包括申請個別申請
飛行日時期間で指定(最長1年間)特定の日時を指定
飛行場所一定範囲(都道府県単位、日本全国)特定の経路・場所を指定
主な用途業務目的(空撮・点検・農薬散布など)趣味目的、特殊な飛行、包括不可の条件
有効期間最長1年間(通常1年で申請)申請内容による
柔軟性範囲内なら急な予定変更にも対応可能変更時は再申請が必要

エキスパートのアドバイス

  • ビジネス視点: 業務で反復・継続して飛ばすなら包括申請一択です。申請コストや手間を大幅に削減できます。
  • 趣味目的の扱い: 趣味の飛行で包括申請は「一律不可」ではありませんが、制度の趣旨(反復継続する飛行の整理)から、単発のレジャーであれば個別申請を行うのが自然な運用です。
  • 10時間の壁: 包括申請では操縦者の「10時間以上の飛行経験」が前提となりやすいですが、「十分な経験を持つ監督者の下で飛行させる」などの条件付きで、10時間未満でも認められるケースがあります。

4. 包括申請で「できること」と「できないこと」

包括申請は非常に便利ですが、全ての特定飛行をカバーできるわけではありません。

包括申請が可能な飛行(6種類)

「DID上空」「夜間」「目視外」「30m未満」「危険物輸送」「物件投下」の承認は包括申請に含めることができます。

個別申請が必須な飛行(包括申請では対応不可)

以下のケースはリスクが高いと判断され、個別に安全対策を審査する必要があります。

  • 高度150m以上の飛行、空港周辺、イベント上空での飛行。
  • 高速道路、交通量の多い一般道、鉄道の上空またはその付近での飛行。
  • 特定の組み合わせ飛行: 「DIDでの夜間飛行」や「夜間の目視外飛行」は原則として包括申請では認められません。これらは事故時のリスクが極めて高いため、場所と日時を特定した個別申請が必要です。
  • レベル3/3.5/4飛行: 補助者を配置しない目視外飛行など、高度な安全管理措置を要するもの。

5. DIPS 2.0を使用した申請手順ガイド

2026年現在、申請は原則として「DIPS 2.0」によるオンライン申請のみ受付となっています。

ステップ0:事前準備

  1. DIPS 2.0アカウント開設: 全ての手続きの起点となります。
  2. 機体登録の完了: 登録記号を取得済みであること。
  3. 操縦者情報の登録: 飛行経歴(10時間目安)を入力。
  4. 保険加入: 総重量25kg以上の機体は賠償責任保険への加入が必須です。 それ未満でも、ビジネス利用では加入を強く推奨します。

申請フロー

  1. Step 1: ログインと申請書作成開始
  2. Step 2: 簡易カテゴリー判定: 飛行内容に基づき、申請の要否を確認。
  3. Step 3: 飛行概要・立入管理措置の入力: 包括申請を選択し、目的や方法を入力。
  4. Step 4: 飛行詳細(範囲・期間)の入力: 「日本全国」や「都道府県」を選択。
  5. Step 5: 機体・操縦者の紐付け: 登録済みの情報を申請書に関連付けます。
  6. Step 6: マニュアル・保険情報の入力: 適合するマニュアルや保険証券の内容を入力。
  7. Step 7: 審査・補正対応: 審査期間の目安は約10開庁日です。不備がある場合は補正指示に従います。

※注意: 余裕を持って、飛行開始予定日の3週間前には申請を完了させてください。

6. 包括申請の「落とし穴」:マニュアル遵守と飛行日誌

許可証を手に取ってからが、本当の安全管理の始まりです。

飛行マニュアルの重要性

多くの事業者が利用する「航空局標準マニュアル」には、「風速5m/s以上の場合は飛行させない」という厳格な制限があります。建設現場の測量などで強風下でも飛ばす必要がある場合は、独自の安全対策を盛り込んだ「独自マニュアル」を作成し、別途申請しなければなりません。

飛行日誌の作成義務(航空法第132条の89)

特定飛行を行う際は、以下の3要素を記録した「飛行日誌」を遅滞なく作成し、飛行場所に携行しなければなりません。

  • 飛行記録: 日時、場所、時間、操縦者など。
  • 日常点検記録: 飛行前後の機体チェック。
  • 点検整備記録: 20時間ごとの定期整備などの詳細。 ※飛行日誌の備え付けや虚偽記載があった場合、「10万円以下の罰金」の対象となります。

飛行計画の通報(航空法第132条の88)

許可取得後も、飛行のたびにDIPS 2.0で「いつ、どこで、どの機体で」飛ばすかを通報する必要があります。これを行わずに特定飛行をすると、「30万円以下の罰金」という重い罰則が科される可能性があります。

7. 2025年・2026年の重要トピックス

2025年3月の大規模改修の影響

2025年3月24日にDIPS 2.0が改修され、操作画面や操縦者情報の登録方法が刷新されました。これにより、2025年3月24日以前に取得した許可は変更や更新ができません。 期限が切れる際や内容を変更したい場合は、改めて「新規申請」を行う必要があります。

国家資格(技能証明)との関係

「二等無人航空機操縦士」の資格を保有し、かつ「第二種機体認証」を受けた機体を使用する場合、カテゴリーIIの飛行(DID、夜間、目視外、30m未満)において、一部の許可申請が不要になる優遇措置があります。ただし、空港周辺や150m以上などは依然として申請が必要ですので、資格取得後もルールの確認は必須です。

8. まとめ:包括申請を味方につけてビジネスを加速させる

包括申請を正しく運用するための判断基準を整理します。

  • 包括申請を活用すべき: 業務目的で、DID・夜間・目視外などの飛行が全国各地で日常的に発生する場合。
  • 個別申請を行うべき: 空港周辺・150m以上・イベント上空での飛行、または「DID×夜間」などのハイリスクな組み合わせ飛行を行う場合。

行政書士として強調したいのは、「許可は免罪符ではない」ということです。許可・承認はあくまで特定の条件下で飛行を認めるものであり、その後の「マニュアル遵守」「飛行日誌の記録(20時間点検含む)」「飛行計画の通報」という義務を遂行して初めて、法的な安全性は担保されます。

最新の法令情報は常に変化します。実務にあたっては、国土交通省の公式サイトを定期的に確認し、コンプライアンスを遵守した健全なドローンビジネスを推進してください。


※本記事は2026年時点の航空法および審査要領に基づき作成されています。実際の申請にあたっては最新の制度内容を必ずご確認ください。